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『今年も弥彦神社に菊の香満ちて』 |
10月、11月の出張は、相手方の都合がもちろん大切ですが、可能な限りこの「弥彦神社の菊まつり」開催中の期間にこじつけてお出でになるメーカーの営業マンがいらっしゃいました。
きまって私の都合を聞いてくるのです。
それは、訪問すべきお客さまにはその用を足してから、ゆっくり「菊」を鑑賞し、時にはホテルで泊まってお帰りになる、そんな日程でした。
案内する私自身「菊」に関しては全く無知で「菊作り」の人達の神経を使った育て方など話に聞いても、さほどの興味も持てないのです。
でも、さすがに彼は、知ってか知らずかゆっくり時間をとりながら、面白いというか、関係ないと思われるような例えで表現したりして楽しんでおりました。
元々持病を知っての仕事と生活でしたが、会社を退職されてもこの時期にお出でになることも多く、数年前、神社の参道の緩い坂、数段程度の階段が辛そうに見えました。
その後は別に時期を定めず「こちらへ来た」と称して会社へ寄って下さいましたが、去年からは姿をみせてはいただいておりません。手紙と電話で近況を知りあう程度です。
彼と初めて会ったのは、そのメーカーと年間数台程度の取引で特定の担当者とて無く、それでも別に支障はなかったのですが、ある時地域割で自分が地域担当になったので、と挨拶にお出でになり、それから退職まで、そして退職後も続いているわけです。両親が新潟出身のせいか私たちには、都会の営業マンらしからず、近所のおっさんという感じ。おべんちゃらは言わないし、含みを持った駆け引きをするような風にも見えない。一見やりにくい、付き合いにくそうに感じられるのですが、それが素直さにも通じ、価格交渉においても「それが原価なんですよね」と言われてしまうと、まさか、とは思っても言いなりになってしまう。
何より社内の取りまとめが上手かったように見受けられました。受注後の設計から製作立会までよく管理し、期待に応えてくださいました。
ある時など、すでに退職された技術者をわざわざ新潟までお連れして頂き、お客様の所でご指導頂いたこともありました。
また特殊なワークの溶接で県内にはそのような設備は無く、困っていたお客さんの事で相談したら勿論県外でしたが紹介して頂き、仕事をやって頂くことになったと感謝されました。
彼の家には「かりん」の木があって、秋には大きな実をよく送ってくれました。
いつも沢山送ってくれるので近所の人達にも分けあって、お互いに「かりん酒」を作って冬の「風邪対策」に使わせてもらっています。
今年の「弥彦の菊まつり」の盛況さをお伝えして偲んで頂こうと思っております。 |
樋山忠明 |
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