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| 『トンネルに入ったばかりで？』 |
昨年からの100年に一度の世界同時大不況といわれて、マスコミの報道は大賑わいです。
日本が世界に誇る大メーカーが工場閉鎖、統合、人員削減と当たり前のように、否むしろ誇らしげにさえ感じられるのは私だけでしょうか。今まで社員も派遣社員も別なく会社のために会社の利益追求の手足となって働いてきたのに、「悪いのはアメリカだ。こうなった以上会社を存続させるためにはこれしかない。だからしかたないのだ」ということか。
でも自衛策の見えだせるメーカー、大企業はそれでいいだろう。
しかしその下で働き、メーカーに貢献してきた中小の会社、工場、全然違った職種のはずの企業、工場でさえ影響が出ています。
自動車、電気の裾野の広さに本当に驚かされております。
「こんなご時世になると役人が一番だね。女の子でもね４，５拾万円貰えてね、結婚する気になれないんだって」
30年位前になるでしょうか。ある大手企業の子会社で旅行斡旋会社があり、取引先の勧めで何回か旅行のお世話をして頂きました。若い男の社員がいつも気持ち良く聞いてくれ乏しい予算でしたが、上手く計らってくれました。
あの頃はマイカー２台で行ける隣県温泉地の１泊旅行で、途中の観光、見学をしながら夕方宿に着くそんな行程でした。
ホテルのフロントへ行くと見学してきた施設の割引券が沢山置いてあるのです。
帰ってから彼に言いました。
「あの方面へ行けば見学コースは決まっている。みんな見学してから割引券を見せられたらちょっと頭へくるよ。事前にお客様にやったら、行く行かないにしても喜ばれるし、割引券があるなら寄ろうかな、というお客様も居られる筈。ケチくさいと思うかも知れないが、以外と喜ばれると思うよ」
翌年お願いしたら、人数分の割引券を沢山、こんなにあるのか思われるくらい持参してくれました。私の忠告以来、お客様には宿泊先のホテルから貰ってお客さんに差し上げ、喜んで頂いたと言っていました。
その彼が突然会社を辞めると言って来たのです。どうして？
「今の仕事が否というわけでもないんですが、時間が不規則、ガイドとしての出張があったり。実は自分はある趣味を持っていて、今となって考えると公務員が一番と思ったんです。
給料もボーナスも景気に左右されずに安定しているでしょう。自分の自由時間もとれそうだし。それで内緒で試験を受けて合格しちゃったんです。お世話になりました」
彼の言ったこと、今しみじみ思い知らされている感じです。 |
| 樋山忠明 |
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