|
『尊敬していた創業者の心はどこに』 |
景気の立ち直りは見えたといわれてちょっと日も経っていると思われます。しかし「山間の部落」でもないのに御当地にはさっぱり感じられません。ある所では中国製品と価格競争させられたり。数量の多いものは文句なしに安い中国へ。少量の製品は中国価格との比較でそれでも頂けるケースがあるとか云われております。
先日お出でになったお客様が最近耳にしたこと、として話して行かれたことで、憤慨するより情けなくなって呆れ果ててしまいました。以前から時々受注し納品させて頂いていたステンレス製の家庭用厨房用品で、その工場では精通している製品だったそうですが、発注の度に再見積もりで価格の低減を要求され続けておったそうです。
今回は製品の仕様、工程、等の細部にわたって聞き出され数量も指示されて再度の見積もりを要求されたそうです。しばらくしたら同業他社へも同じ仕様で見積もり依頼が出ていたことを知ったそうです。狭い町ですから今までどこで製作していたか、ということは業界のみんなが知っている筈です。こんな時にも使える言葉でしょうか「背に腹は代えられず」
再びの訪問を受けた時は、同業他社の見積もり額もさることながら、中国へ紹介して取った見積額よりも10%高く買うからどうか。考えに考えて、唯一つ救いになると信じていたこと、みんなが「この製品作りに精通していた」。そこで受注されたそうなのです。
指定納期めざして生産に取り掛かりました。以前にも増して生産工程を厳しく、完成品は言うに及ばず。第一回目の出荷について連絡したら、当初指定数量よりも大分少なかったんだそうです。わけを問うたら、残量はいずれ連絡するとだけ。納品したものだけが受け入れ検査の対象となり、支払に回ります。当然のことながら資金繰りには苦労されたそうです。
それに輪を掛けるように来社して云われたことは、「お客様に使って頂いて1個でも不良品が発生したら全数検査、または返品」それに聞いたことも無い「安全基準」を取りだしてその規格に合致すること。
そして私に「スポット溶接でこれは大丈夫」という証明を付ける方法は無いのでしょうか。
と、問われました。全数破壊検査をしたら製品は無くなってしまうし、非破壊検査のレントゲンがもし良かったとしてもそんな費用の出せる状況ではなし。抜き取り検査で合格しても変形して製品にはならない、そんな無駄にする費用も出せないと云われるんです。
PL法があるんだから、それで対策させていただければと思っているんだが‐‐‐‐と云って困っておられたとか。私は聞き終わって激しい憤りを感じました。
創業者の精神はどこへいったのか。苦労されて立ちあげられた自伝を読んだ感激は。私は尊敬すらしていた会社でした。しかもその会社のユーザーでもある工場と社員のみなさんに対して、いじめ以外の何物でもないではないか。すべて時代が変わったとしてやむを得ぬことか。こんな時いつも思う。同じ日本人同士なのに。 |
樋山忠明 |
|
|
|
|