|
『お世話になった師をまた喪いて』 |
訃報とはいつも突然くることと承知していながらも、知った時はいつも驚愕してしまう。
第一線を退かれて悠々自適の余生と言ったらお叱りを受けるでしょうが、意のある毎日をお過ごしのことと勝手に考えて居りました。
会社の前を通る時、いつも確認するように見上げる2階のその部屋の明かりも見えない日が続いておりました。でも、まさか、ご病気だったことも、入院されて居ったことも知らなかった、知ろうとしなかったことになるでしょう。
この「ステップ 1」にも度々書かせて頂いておりました。
今の会社の土地を求めたのも、強いお勧めをいただいてのことでした。
「駐車場が無かったらだめだよ。せっかくお客様が寄ろうと思って来ても車の停め場所が無かったら寄ることも出来ないだろう。それともっと広い通りに面していて、分かりやすい場所でなければダメだよ。製造工場なら良いかも知れないが、商いをやるには場所が一番だ」
「当面は辛い、厳しいだろうが買ってしまえば借金なんてどうにでもして返して行けるもんだよ。もし、それが出来ないようになったらいつでも俺んとこへ来い」
そして、縁あって今の土地の話が浮上した時は直ぐお知らせに伺いました。
「それは良い。うちの会社の隣じゃないか。こっちも好都合だ。その話進めた方がいいよ」
おかげ様で今の地へ来ることができました。ある時、某土建会社の方がお出でになり、残土を入れさせてもらえないか、後始末もキチンとやりますから、と云われました。
私は自分で土を入れてもらったら、どれほどのお金がかかるか分かりませんが、無料でやって貰えるなら----。欲に目が暗んで、と思われても仕方ないが、お話して指示を仰いだほうが良いと思いお伺いいたしました。
「それは止めとけ。彼らはいつ運び込むか分からないし監督なんかしておれんだろう。何をどんな土を入れるか分からんぞ。それはただでやってもらえるのはありがたいが後で困る結果になる」やはりそうか。
「ところでその土建会社とはどこだ」「はい○○会社ですが」と云ったら
「おい、そこなら良い。間違いない仕事をするし、俺が社長にひと言云っといてやるから」
おかげ様で土盛りはできました。
今の社屋が出来て竣工式の案内を持ってお願いしたら、心から喜んで下さり出席頂けることになりましたが、当日になって急に不都合になられ代理の方にご出席頂きました。
思えば開業して最初の頃、何回通っても買っては貰えなかったこと、でも不思議に時間を割いて話相手にはなって下さいました。
最初の商売をさせて頂いた時は私にだけと思っておりましたら、従来の取引先にも同じに発注を掛けておられたのです。しかし価格がどうのこうのというようなことは一切申されませんでした。今は想い出になりますが、沢山、沢山の教えを頂戴いたしました。
ありがとうございました。 |
樋山忠明 |
|
|
|
|