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【年寄りの北陸ボヤキ旅行】 |
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5月になったら、いつでも良いから北陸へ旅行に連れてってくれないか。
この歳になると、ツアーとかいう団体旅行には付いていける自信もないし、知らない者同士の旅などつまらんと思っている。
そこでいつも甥っ子に頼み込む。年金暮らしで男一人、二人分くらいの旅行費用は手元になくても、口座とやらへきちんと残っている。
その時が来た。早朝に車が来て二人でドライブだ。
忘れていたが、金は出すけどスケジュールも旅館の手配もみんな彼まかせ。
ただ、ここへは行きたい、これは見たいと自分の希望は伝えてある。
北陸自動車道は快適そのもの、ちょっと曇ってはいたが雨の心配はなさそうだ。
富山県に入って朝食をとり、「昼飯は東尋坊で越前蟹とお刺身でいきましょう」と言われて「よしよし」と答える。
高速を出てから「嫁脅し肉付きの面」とかも寄ってくれて、自分が申し入れておいた「東尋坊」へ着いたのは11時半。駐車場はガランとしていて予想外だった。
自分はいつも日曜日だが、そうか今日は木曜日か。
歩いて岩場、「東尋坊」らしき景観が見えてきた。行ってみますか、と言うからそのために来たんだ、ごつごつした岩の上を転ばぬようにゆっくりゆっくり、ある所は手を付いてでもの覚悟で先端まで行った。上から見下ろす風景は本やテレビで見るものと同じ筈だが、何か一つ足りないような感じ。
観光船の案内だけが大きく聞こえ、人影もまばらだ。
「船に乗りますか。この奥まで入ってくれますよ。」
そんなのに乗らなくても想像はつく。それより、乗船場へ下りていって、また上って帰らなきゃならないことを考えたら、乗りたい気持ちは失せてしまう。
観光土産物店や食堂の居並ぶ通りを、ぶらぶら歩いて昼飯の時間とするか。
声を掛ける店員もまばらで、すれ違う人の群れも少ない。時々日本人だと思っていたのに、すれ違いざまに耳へ入る言葉は全く分からない外国語だ。
駐車場の店の食堂の前は、蟹、お刺身などの、1,500円、2,000円、2,500円と豪華そうに見える定食の写真などが沢山貼り付けてある。
しばらくはいろいろ眺めて、どれにしようかと考えていたが結局
「おい、ざるそばにしようか」
650円のざるそばじゃ期待もできまいが、車の中で想像していた美味しかろうと思っていた定食が、なぜか欲しくなくなっていたんだ。甥っ子も同じらしく、
「駅の立ち食いより悪いかも。でもあまりボリュームのあるものは欲しくないし」
何もしないで車に乗っていて向かえた昼飯の時間では、腹も空かないのだ。
憧れの「東尋坊」ではあったが、見るものと言えば、あの岩場だろうが、たったあれだけのことで、人が集まり、食堂、土産物店が商売になるとは結構なご時世だ。
一度見たら沢山だ。と言って自分も来てしまった。それから「丸岡城」「永平寺」へ向かう。
永平寺では、修行僧の説明があり、つるつる頭を手でなでて「帽子」をとるように言われ、今日始めて疲れた頭をあらわにする。階段また階段ですっかり参ってしまい、途中で戻ろうと言い、「もういい、もういいから旅館へ行こう。時間は良いんだろ?」
車は山代温泉へ向かう。 つづく |
特別寄稿 K.T |
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