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【風来坊の旅日記7】 |
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冬は寒さは覚悟せねばならないが、雪化粧の山々、そこで頭に雪の帽子を被り毅然たる態度で真っ直ぐ立っている杉がいい。いつの年か定かではないがまた雪の湯宿を訪ねた。
急ぐ旅でもないし、宿は行きつけとは言っても前の年は新緑の頃、一回でご無沙汰だった筈だが、今回の電話では名前を言っただけで、おばさんから返ってくる言葉が、ありがたかった。そして
「いつものあの部屋で良いんでしょ。待ってるから」
雪の無い東京からスキーもしないのに、寒いところへ行くなんて。自分でも来るたびにそう思うけれど、病みつきになるかどうか、自分はそこまでの愛着もないつもり。
鈍行の乗継をゆっくり楽しんで、青空の下の雪景色もちょっと走れば垂れこめた雲で一変する。ローカル線は本当に地域の人達の大切な足なのだと、つくづく思う。ラッシュは朝夕の1回こっきりかも知れぬ。でも自分の利用する中間の時間帯はがら空きに近いけれどお年寄りや、仲間でお出かけか、あちこちでグループ化して話し合っておられる。
駅前のラーメン屋でお酒1本、温まったところでラーメンをすすってバス停へ行く。
時間もちょうど良し。すべていつものパターンである。
始発のバスは便数も少ないせいか、それでも小型バスながら8人の乗客で出発した。
ちょっと小高い山道の両脇は白一色でわずかに起伏は見えてもなにもわからない。
宿の坂の上がり口でバスは停車し自分とも5人降りた。そして3人が坂を登った。
ありがたい。話友達ができた。
「やあ、やあ御苦労さん。わざわざのお出でありがとう。さあゆっくり温まって休んでください。ご馳走つくるからね」主人も顔を出して「ちょっとひさしぶり?かな。風呂へ行く時は言いな。1本用意してやっから」
バス、トイレ無し、6畳一間で床の間にテレビ。たくさんだ。
早速着替えて降りていくとバスの二人のオヤジも盆に銚子と野沢菜、たくあんの漬物の皿が載っていた。おばさんが自分にも用意してくれた。そして「はい、いってらっしゃい」
二人は地元のおなじみさんで年に数回思い出したように、お互い話がまとまると出かけてくるという。
「たまには女房の口説き話から逃げたくなるさ」
どこも同じ、嫁、姑の争いで毎晩懲りもせず話しかけてくる。ウン、ウンとテレビを見ながら頷いていると、突然テレビが切られて「聞いてるの?」まったくやんなっちゃう。
「お前んとこは良いよ。うちは倅の嫁がいない。もうあの年だから無理だ。一生独身、そしてな、俺んちは絶えちゃうよ。それも仕方ない。考えようによっては気楽な面もあるけどな」
そんな話を聞きながら3人しかいない湯船で酒を酌み交わす。
どこも問題あり、か。 |
特別寄稿 K.Y |
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