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【就職するという事】 |
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大学時代の学友が出張で新潟へ来るという。
卒業してあれこれ10年位は経っている。お互い生まれた町も選んだ仕事も違う。彼は技術系で仕事も図面書きの道を選んだ。私は同じ道を学んだものの一番やりたくないと思っていた営業で数字に追いまくられて働いている。
ホテルはとらないで家へ泊らないかと言ったら、明日の朝が早いのでもう取ってあるが今晩は一緒に飲みたいね、と言う。時間を示し合わせて居酒屋で会うことにする。
6時、「やぁ」メガネの奥で人懐こそうな目が待っていた。
「変わらんなぁ」「自分だってそうじゃないか」そして生ビールを頼む。
乾杯もそこそこにお互いの近況報告になる。
「おい、まだ一人だったよな。それとも良い人でもいるのかね」いつも誰でもみんなそれしか云わないから慣れているとは言え聞きあきて返す言葉もめんどうだ。
「お前さんも早く決めろよ」嬉しそうにいう。お代わりのビールがきた。さも美味しそうにジョッキを傾けながらノドが鳴る。
「営業ならあちこちへ行ってるだろう。良い娘の一人や二人位いたって当然だろうに。俺なんか見ろよ。もう二人目が出来るんだよ。でもね、反省はしてるのよ。してますよ」
在学中に同期の美人女性を射とめたのだ。
「金をかけて大学で学んで、少しは社会のためになる仕事をすれば良かったんだろうが、俺がさっさと頂戴しちゃったから悪かったよな」「そんなこと思ってたんか。良いとこあるな」
「そりゃそうだよ。何のためにお金を掛けて大学までやったのよ。国のためにも働かんで、まさか卒業と同時に結婚式ってことを願っている親もあるまいに」
そして話題が変わった。
「大学で半年間の実務経験の時にさ、みんなあちこちの企業へ振り向けられたじゃない。そして卒業してその実習させて戴いた会社へ入社した者は一人も居なかったよな。今思うの、あの時の会社へ行けば良かったな-ってね。一緒に仕事をした人達もみんな良い人だったし、独身寮の1室をあてがわれて、賄いも良かったよ。何よりも今の自分の会社より給与ベースが格段に違うんだよ。仕事も今の会社と殆ど変らないと思うけど、どうしてそんな差が出るのかな。やっぱり会社の経営理念かなんかの違いからかね」
「あの頃の募集のガイドでは違いはそんなには分からなかったよな」
「それにしても、みんなで話し合ってたじゃない。『卒業しても内の会社へは絶対に来るな』ってみんなそう言われたと言ってたよな。今思うにいったいどういう意味があってのことなんだろうって」「自分もこんな会社へ来ると大変だぞ。って云われたよ」
そう言いながらふと思いついた事があった。高校時代の友が就職で中小の町工場の見学に行った時最後に「是非皆さんの力を貸して下さい。一緒に仕事をしませんか」油汚れの作業服の勤続30年という部長が話されたという。
30年勤めても…と思ったとか。いったいどういう事なんだろう。これが愛社精神の為せるわざということだろうか。だとしたら、こんな違いが出る根拠はいったいどこにあるんだろう。それとも愛社精神なんて関係ない所にあるのかな?
さて、自分が今働いている会社を本当の自分はどのように考えているんだろう?
親子、兄弟が同じ会社の同じ屋根の下で仕事をしている所も有ると聞く。勿論世にいう「中小企業」であって、しかも卓越した優良企業だそうな。 |
寄稿S.T |
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