|
【熟年結婚、否晩年同居じゃない?】 |
|
1通の封書がきた。毎年の年賀状か年末に「年賀欠礼」以外の便りは届いたことなど無かったのに。しかも「写真在中」とは何事ぞ。
同じ大学を出て私は生家へ帰って地元の企業に就職したが、彼はそのまま東京の金融関係の会社へ勤め、関東各地を転勤し定年退職後も関連企業へ3年、2人の子供は自立して時々孫を連れて来るといっていた。
完全に仕事から解放されて夫婦2人の毎日、今までの罪滅ぼしのごとく、二人で外国旅行を楽しんでいたようだった。その弊害がいつもわが細君から浴びせられて困っていた。
その二人っきりの楽しい、まるで新婚時代に返ったよう、とまで言っていた彼から訃報が届いたのは、それから二年にも満たなかった。
病院で看病すること2カ月余。
葬儀に駆けつけた私に「悔いは無いといえば、嘘になるかも知れない。でも仕事中は本当に不平も言わず、良くやってくれたと感謝している。できればこれからの人生、もっともっと一緒に楽しんでほしかった」
対象的に3人の孫が彼にまとわりついて楽しそう。
それからマンションで一人暮らし。時々誰に告げるでもなく一人で国内旅行を気ままに楽しんでいた。旅先からたまにくる彼からの電話で細君にまた一言聞きたくないことを聞かされることになる。
俺だって、それは彼ほどの収入も無かったし、少ない年金暮らしには違いないが、子供や孫と一緒に毎年国内1泊旅行はしているし、自分だって友達との旅行で結構出ているじゃないか。
彼からの「写真在中」一人旅行の写真なんてつまらんものを。勝手に思いながら開けてみて驚いた。スーツ姿の彼の隣に50代?否もっと若い?メガネの奥にキレナガの目、清楚で品があると言う前に“かわいい”女性がおるではないか。細君でさえ「かわいい!」と連発している。
いそいで便せん1枚の手紙に眼をとおす。細君は写真をはなさない。
「古希をこえた自分がまさか、と何回も自問自答して決心した。彼女65歳誰も信じない。20年前に夫と死別し2人の子供もみな所帯をもって今一人暮らし、とにかく身の動く人でパートでも何でも、人と接することが好きっていうのか、いろんなお店で働いて慕われてきた人なんだ。客として時々買い物に行ってるうちに食事をお誘いしたり、そこはお互い独り身であることの気安さといえるでしょう。一年は続きました。そのうちお互いの子供たちにも知れ、逆に尻を押される形になって、私のマンションへ入って頂くことになったのです。何より料理が好きで、今まで一人暮らしだったから大した事もしなかったけれど、二人で食べられることになったら作ることが楽しい、とか言って‐‐‐
もう良い。勝手にどうぞお楽しみ下さい。 |
寄稿M.K |
|
|
|
【投稿コーナー】への投稿募集中♪
↓↓↓ |
|
|
|
|
|