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『あれから一年』 |
けっして業績の良い過去でもありませんが、まさか今以上に悪くなるなんて、少なくとも自分の所くらいは。とは甘い考えでした。
電話のベルが鳴ることさえ少なく、お呼び出しの声のかかることもめっきり減ってきたようにかんじられます。
それでも、新しい仕事や、新製品のお話などお聞かせ頂くと、すぐその気になって真剣に見積もりもし、悪いことには“取らぬ狸の皮算用”で一喜一憂することしばしばです。
去年の春頃に受注していながら景気の動向が思わしくないため、延び延びになり、今年の4月、5月そして無期延期となった件。
また去年の暮れにこれは堅い話、どうしてもやらねばならないこと、と言って聞かされた話も納期は3月、それから5月の連休前、そして7月。納期は延び延びにこちらから催促すると返ってきますが、発注はしてくれないのです。
支給品の溶接電源はとうに送られてきており、やることには違いなかろうと思ってはおりますが、当社で図面は上がっていても、GOが掛からぬ限り手を掛けるわけにはゆきません。
それは7月23日打ち合わせとご指導を頂きに埼玉の取引先へ行っての帰り道でした。関越道の水上インター手前でした。4時頃いつもおとなしい私の携帯電話が鳴り、さてどこの誰だろうとでてみると「社長、遅くなって済みませんでしたが、まだ決定ではないのですがここ迄来た以上もう掛からないと間にあいません。くわしいことは後で報告いたしますが、例の件、すぐにかかって下さい。そうしないと間にあわないのです」
「ありがとう、それで納期はいつなの」「9月15日です。その日にとりあえずサンプルがどうしても欲しのです」機械が出来なければサンプルも製作できません。
「ちょっと難しいと思うが、場合によってはサンプルは納入先で作らなくても当社で未完成の状態で作ってもいいのかね」それでも結構とのこと。
思いがけない頃に思いがけない所で発注頂き大変嬉しく、帰ってみんなに話たところ、先に一報が入っていたとの事で準備にかかっておりました。
外注工場にもお願いして急ピッチで進め、今月初めには当社へ搬入し制御盤の取り付け,配線と久しぶりの仕事らしい仕事に一生懸命やってくれました。
そんな矢先「社長、サンプルの材料が遅れて20日過ぎになるってんですよ」「そんなことは許せん。さっさと持って来て試運転して納入させてくれ」今度はこちらから頼みこむしかありません。それでも15日サンプル材料が届き、16日には納入先担当者も見えられて立会試運転ができました。また溶接の仕上がりも良く喜んで頂きました。
早速テスト製品は溶接も終わり工場へ発送されまして、機械の方は多少の手直しをして、終わり次第納入ということになり、やれやれ、とほっとしている処です。 |
樋山忠明 |
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